No.007

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つまらん!最近の広告!

 ALTの話題になるかどうか分からないのだが、最近広告がつまらない。朝日新聞の天野祐吉のコラムでキンチョウのコマーシャルの中で「ツマラン。おまえの言うことはツマラン。」と言う親父の話がおもしろいと言う記事が載っていたが、それにしても広告全般がツマラナイ。この不景気でお金がないからつまらないと言う人もいるかもしれないが、所詮アイデアの問題である。では何が原因なのか考えてみた。


画像は昔の広告を集めた書籍の表紙(詳しくは最後に)

 まずアイデアを出すべき制作者の能力が下がったのか?次に考えられるのはそれを選択する際の広告会社の選択眼が下がったのか?はたまた、広告会社の提案を選ぶクライアントの宣伝部の問題か?ここで考えられる最大のことは不景気であることで、仕事イコールお金と考えた場合にクライアントの要望(たとえ悪いことでも)を聞くことになることだ。そして広告会社もタテをついてまでクライアントに提案できるか?だ。また、クリエイターも低コストの中で品質の高い仕事をする気にならないし、DTPなどの発展で素人でもそれらしく見えることができるようになり、クライアントの担当者にとって、クリエイターは専門家であり「特別な人」には、見えなくなってしまったことにあるのではないだろうか?

 日本ではバブル崩壊まで広告は土地神話と同じで右肩上がりしか考えられなかった。そしてそれを享受した人々も多かった。しかし、バブル崩壊が無ければデジタル化の波は付加価値という価格を上げられる理由になっていただろう。ところが、デジタル化イコール=価格破壊となり、価格破壊イコール=品質破壊、そして広告のアート性や作家性の崩壊となった気がする。昔の広告はクリエイターの個性が重用しされたが、現在はタレントの個性のみであり、そのタレントも本来の才能と言う意味性は落ちてしまった。その結果が最大にみられるのがTVだ。テレビでタレントの才能でおもしろいものはない。「明石家さんま」がおしゃべりの才能があるとしてもそのトークの相手は素人やタレントの私生活などの話題でのおもしろさであり、プロが作り上げるおもしろさではなく、北野武の番組にしても素人相手であり、プロの技や芸というものでは受けない時代になってしまったのだろうか、それとも現在のプロが努力をせずにいた結果なのだろうか?まあ、政治も国連までもが幼稚になってしまった地球ではあるが・・・。

 そこで広告とアート性についてなのだが、バブル絶頂期まではクリエイターが他のクリエイターとの戦いを意識していた気がするのだが、その後の業界人の敵は不景気と生活費になってしまったようなのだ。つまり、夢が持てないのだ、クリエイト(創造)する人たちが夢がないのだから、広告にも夢を感じない。その夢のない広告を見て、購買に結びつき景気がよくなるハズがない。

 今回、下記に紹介する昔のアメリカの広告を見てつくづくと「夢があったな、買うと幸せな気持ちになれたな、憧れたな。」という気持ちを思いだしたのだ。デフレスパイラルでどんどん下がり続けるモチベーションをどこかで上昇気流に出来ないのかと考えた時、それは表現者達の仕事ではないのか。また、その表現が「他人が美しいとか、綺麗とか、すごいとか感じ、感動を与えられればアートなのではないかと。」と以前に書いたアート性の意味に合うような気がしたのだ。なぜなら、これらの本に載っている広告は時代性やノスタルジックもあるかもしれないがすばらしいのだ。なぜなら、クリエイターがアーチストとしての自負を持っているからではないだろうか。ロートレックのポスターがアートとして語られるようにクリエイター達が広告で賞をとってギ「ャラを上げようという気持ちは所詮、技術の問題であり、本質的には「広告表現アーチスト」の自負が必要なのではないだろうか?

 たぶんこの考えだとプレゼンの勝率も悪いだろうし、所得も減るかもしれない。しかし、クライアント側も2極化して、安い広告制作者と高い制作者への発注に分かれるのではないだろうか?なぜなら、タレントよりも商品を表現で「タレント化」できるのだから。


1960年代の広告を集めた本

1950年代の広告

1940年代の広告

1930年代の広告

今見ても60年代は未来図をみるような時代。自分たちはこのような広告のなかで夢を持って生きてきたのか。

もはや戦後、明るい未来に向かっていく時代。アメリカの豊かさが隅々から感じられる時代。

この年代は第2次世界大戦など戦争の時代。多くの「兵器の広告」が載っているのが不思議。誰が買うのか?

この本の実物はまだ見ていないのだが、時代はアル・カポネなどの時代か?

 上記の本は大手の本屋で見ることが出来るが店頭では5,000円近い価格である。私は買った後にアマゾン・ドットコムで見つけたが3,500円くらいだった。輸入物は先にネットで調べた方がいいと思った次第である。この本はイギリスの発刊だが日本語版でも発売されている。

 また、この後の1970年以降はまだ出ていないようだ。70年代はベトナム戦争とヒッピーやサイケデリックの時代でこれもおもしろそうである。80年代は日本バブル、90年代はアメリカのITバブル、そして2000年代はテロ、イラク戦争、病気、不景気・・・と明るい広告は出来ないのだろうか?広告がアートになるように・・・。

この項終わり
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