1998.3.5 更新
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第2弾
間違いだらけの
CAR DESIGN

間違いだらけのカーデザインとは

2・8(にっぱち)の法則といわれるものがある。 統計をとってみると、世の中の2割の人が8割のことをしていて、8割の人は2割のことしかしていないというのだ。私の体験的にも「そんなもんかな」という感じはするし、できれば自分は2割の側に居たいと考えている。
 そこで、デザインの事なのだが、形を作れば良いってもんでは無いだろうと私は思っている。
 世の中のさまざまな自然界の物は神様がデザイナーであるので美しいのだが、 人間界の8割はセンスの無いデザイナーが作り出していることにもなる。
 そして、その中で社会生活上どうしても目についてしまう物のデザインの責任は許し難いのだ。 そのような物の筆頭は建築物だが、その次にあげられる物が自動車である。
 自動車に求められるものは1に機能である。だから、機能のためにできた形は仕方ないし、それで美しい場合、それは「機能美」ともいわれる。しかし、近年の工業技術はどのような形にも中の機械を作れるようにもなってしまった。 すると、おもしろい形や奇抜な形、受けねらいの形が生まれてくる。しかしそれは「機能美」の反対に位置する物でデザイン(本来の意味は設計)的にみると「美しく無い」のである。
 グラフィック・デザインの場合はアート性のしめるものも多いが、工業製品の場合まずは機能だろうと思う。 ところが、最近の自動車はマンガのようなものや、わざわざしなくても良いだろうと思う「他車をまねたデザイン」をしたものが目立つ。没個性を目指してデザインをしているのだろうか。いやそうでは無くて単純にセンスと能力が無いということなのだろう。
そのような、カッコワルイ(形だけでなく意識が)ものを見つけてみたいと思う。

ガラスの大きさが、窓じゃないぞ!
黒塗りでごまかすな。

 

トヨタ ノア
トヨタ自動車のノアというRV車は安全ボディーを唱った、安全のための「ゴア」構造なのは良いが、 窓はガラスの黒塗りなどでごまかしているが、かなり閉鎖的なクルマである。
室内からの開放感はもっと無いと思うのである。下の写真はガラスの黒塗りをボディ色で塗ってみたものであるが、3列目のシートはほとんど荷台扱いである。ただでさえ、ワンボックスタイプからボンネットタイプになり、室内のスペースはせまくなっているのにである。
トヨタ ノア

リアガラスの窓(開口部)はもっと小さい。
この後ろ姿は各社に流行している最悪なデザインだ。

 

トヨタ ノア

高位置のリアランプ

 この後ろの処理は最近のRVの流行なのだが、ハヤリ以外のなにものでもない。
どうして、この高い位置にランプ類を持ってきたのか、その始まりを思い出してみると トヨタのカリブが登場した時にこのリアランプ類が左右の上部に配置されたように思う。 カリブは元々若者向きのお遊びワゴンという性格から、リアランプの処理も遊びとして気にならなかった。次にボルボのワゴンのリアランプがこのハイランプ型になったが、デザイン的にはきれいにまとまっていた。 その頃からこのような高い位置のストップランプが流行し始めた。そしてホンダのステップワゴンが登場し、車高の高いミニバンタイプにもこのハイリアランプが登場してきた。しかし、このワンボックスのような車高のクルマでハイリアランプが必要だろうか。また、その逆にデメリットは無いのだろうか。また、このトヨタのノアの場合、上部の半分のランプは中にランプは入ってなく、明かりはつかない単なる反射板なのだそうだ。

トヨタ ノア

従来のリアランプはどこにあったのか。

 従来のリアランプは現在のランプの下の部分にあった。上の写真でシルバーのボディ部分である。だから、逆に現在のランプ部分にはなにもなかったのでリアのドアはこの部分まで被さっており、つまり以前のリアドアは上部が広いTの字型だったのある。そこでこの部分がリアパネルの枠になり窓ガラスは上記写真でいうと赤い部分まで大きく開口部として使用できたのだ。
 ところが現在の処理はボディの内側に入ったドアパネルのために、そのパネルに枠を取ったそのまた内側にしか開口部を作れないのである。そこで、従来の窓の部分までガラスを張りごまかしているというわけだ。それではなぜリアパネルを外側までにしないのかというと、リアランプ類はボディ側につけるという法律なのだそうで、それで現状のような処理になるわけだ。
 それでは、依然のボディ部分は何に使われているのか。何も使われていない。つまり、機能的にも構造的にも全く無駄なスペースなのである。 また、リアから見た時に従来は乗用車類のランプ類と同じ位置だったワゴンのランプ位置が、全く上部に移ってしまったことになる。そこでこのようなことが考えられる。このようなワゴンの後ろを長い道のりバイクがついていたとする。特にロングツーリングなどでタラタラ走っている時、ライダーは路面状況を見ながら走っているから、突然この手のワゴンのストップランプやウインカーが点いても見落としてしまう。たとえば、従来の位置や下部に小さなストップランプでもついていれば良いが、写真をみるとわかるように、ミニバンの下半身は無灯火なのだ。
 また、上の写真のように黒塗りのガラス部分をボディ色にしてみると、このようにかなり閉鎖的なことわかりる。これはトヨタのノアに限らず、近年のほとんどのワゴンにいえる。
また、セカンドの窓類が開けることのできない、「はめ殺し窓」になっているのだ。理由はエアコンがあるから、開かなくても良いとか高速で走る時の風きり音を押さえられ静かになるというのである。
しかし、この手のワゴンはロングツアラーとしてよりも遊び場所まで行って、おいしい空気を吸ってくつろぐための道具ではないのかと思うのだが。
 クルマのデザイナーがスポーツカーのデザインをしたいのだけど、担当がワゴンでその思いでいじってしまうのだろうか。


クルマのデザインでは遊びだけでも許せるジャンルの物もある。それは私も認める。
しかし、RVまたはワゴンといわれるものは機能を押さえてほしいものではないかと思う。

クルマの話はまだまだありますが、いづれ書きます。今回はここまで。


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