1998.1.10
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第1回 Macの創世記の話から

 「デジタル・デザイン」とは一般的にDTPと言ってるものを私がプロのデザイナー向けに呼んでいます。 なぜなら、DTPという言葉は1986年頃に米国において、当時のアルダス社のPageMaker(ページメーカー)によって名付けられたコンセプトです。 元々はアルダス社の社長が出版関係の人で、その仕事にMacの可能性を感じ開発したものがPageMakerでした。 それは白黒9インチのMacintosh Plusの時代ですが、それでもテキストと画像を扱えるコンピュータは出版関係の人には画期的でした。そこで、Desk Top Publishing(机上編集)という言葉になったのです。
 その頃に私もMacを知ったのですが、その時期のDTPというものはグラフィックデザイナーにとっては最初の一歩というものでしたが、目から鱗が落ちる思いでした。
 そこへ1987年に、私は運良くAplle Japanの仕事をすることになり、その年の3月に極秘で新製品を見せられました。それがカラーが可能になったMacintosh IIだったのです。 これを見たときはついにデザイナーに「新しい時代がやって来た」と感じました。 明治維新と言うか、幕末と言うか、黒船来航、文明開化って奴です。 おかげさまでその時から、Aplle Japanの方々に教えをうけながら、そして研究しながら、MacとDTPの成長を見ることができました。実際の所、日本語の対応も弱く、また日本での参考資料も少なく、DTPそのもののコンセプトさえ日本で語られていいない時代です。その時にあったのは元MacLifeの高木編集長の手がけた、MacLifeの前身であるMacWorld誌のみでした。
 Mac World誌写真
1986年7月のMACワールド誌(日本で最初のMacの雑誌)
 この本はネーミングにクレームがついて、3号で廃刊し、編集長の高木氏もBNNに引き抜かれてMacLifeを創刊しました。 (その後、このMacWorld誌は「 Mac+ 」誌と名を変えてしばらくの間、存続しましたが・・・。)
 そして、Macは徐々に話題になっていったのです。しかしデザイナーにとってはデザインの道具としての前に、コンピュータという恐怖感と日本語環境の遅れなどから、なかなか手に触れようとしないのでした。 そのような状況ですから、ほとんどのデザイナーはDTPは出版界のことだろうと全然関心を示しませんでした。

●DTPという言葉はアマチュア用

 またその頃、日本でもやっと日本語ワープロが登場した時期でもあり、日本語ワープロを出しているメーカーはワープロで作る物をDTPと呼んだのです。
 その時のMacのDTPとは全然目的もクオリティも内容も違っていたのですが、ほとんどの人は同じ「言葉DTP」を基に論じてしまうわけです。それは編集者達にとっても同じで、グラフィックデザイナーの仕事と編集者のレイアウト作業を同じように考えているようでした。
 それはMacによってある程度簡単にデザインができてしまうので、「にわかデザイナー」がたくさん現れることになったのです。テクニカルライターが絵を描き、デザインをし、レイアウトをする。「それがDTPなんだ」となってしまったわけです。
 そして、それを見たプロのデザイナー達は「MacのDTPは所詮こんなもんさ」と結論ずけてしまったのです。そこで、私は5年ほど前から「DTP」と「デザイナーの目指すもの」を分けて表現するために言葉をかえて表現するようにしたのです。

●Macデザインまたはデジタル・デザインという言葉

 ちょうど、そのころ私にMacの本を出さないかとの話があり、「デザイン業界向けの本なら」とのことで、「Macintosh デザイナーズ・バイブル」という本を出しました。その本ではワープロのDTPと、ハッキリ区別するために「Macデザイン」と言う言葉を使用しました。それは、Macによって始まり、Macによって作られている「デザイナーの為のインフラ」を含む環境の全てを伝えたかったからなのです。このネーミングの裏側にはその後の「WindowsのDTP」の違いも含めて表そうとしていたわけです。

デザイナーズ
by A.Fukuda
1992年のMacintosh デザイナーズ バイブル(弓立社刊)

●Macintoshグラフィックデザインという言葉

 前著の翌年、今度は実戦向けのMacデザイナー向けのテクニックの本を出さないかとの話があり、「デザイナーの教育本なら」とのことで、「Macintosh Graphic Design 」という本を出しました。その本では、プロのDTP技術と断言するために「Macintoshグラフィック・デザイン」と言う言葉を使用しました。そしてMacによってデザインをしているデザイン事務所のことをMac Design Officeと呼ぶことを提案しました。結果的には現在のほとんどのデザイン事務所にMacが入りましたから、いまさら大げさな名前になってしまいましたが・・・。
 これまでに、こだわってきたことは「デジタルによるデザイン」はMacによって始まり、Macによって作られ、すでにインフラが完成しているのだと伝えたかったと言うことです。
 しかし、圧倒的なMac以外のPCユーザー(Win系)の手前、コンセプトそのものを表すためにはMacをはずして「デジタル・デザイン」を使用することにしたのです。

Macintosh
by A.Fukuda
1993年のMacintosh Graphic Design (毎日コミュニケーションズ刊)

●「デジタル・デザイン」はプロの仕事を表す言葉

 以上のような経過から、意識的に「DTP」との違いを表すために「デジタル・デザイン」という言葉を使うようにしました。「デジタル・デザイン」はMacによる基本的なデザインからSGI(シリコングラフィックス)を利用した画像加工、またサイテックスなどデジタル製版機を含めたデザイン業界全体のデザイン作業を呼びますが、デジタル製版を考慮した部分は「デジタル・プリプレス」と呼んでいます。
 また、私はデジタル製版用のスキャンデータをデザイナー側で画像加工して製版までもイメージ通りにする事を「フル・デジタル・プリプレス」と呼ぶことを提案しています。

<第2回 Macによるデジタル・デザイン>へ続く


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